数年前から、家の間取りの中に「スタディスペース」を設けることが多くなってきました。その名とおり「学ぶ空間」です。リビングの一角だったり、吹き抜け周りだったりと場所は様々です。
ふと思いました。北王がつくっている『スタディスペース』って、本当に勉強しやすい空間なんだろうか?子供の学力向上に家づくりはどこまで関われるんだろうか?
そんなわけで日々、作文を通じて子供と触れ合う、藤本先生に聞いてきました。
先生、このスタディスペースって、どうなんでしょうか?
五十嵐(画像右):先生、いきなりですが、こういうデスクはスタディスペースとしてどうなんでしょう?
<リビングの一角、オープン階段の下に設けたデスク>
先生:うーん、こちらもいきなりですけど、ここは小さい子が勉強する場所としては適していないかと。
五十嵐:ええっ~!今までこういう階段下のスペースにデスクを設けることが多かったのですが…
先生:人が勉強に集中できる場所として、一般的には①部屋の出口が見える場所 ②背後に人の気配を感じない場所 ③上部に人の気配を感じない場所 というのが挙げられます。そこから考えるとスカスカのオープン階段の下っていうのは….
五十嵐:部屋の出口が見えなくて、背後に家族の気配を感じまくって、家族が階段上り下りする度にその気配を感じまくる、集中とは正反対の場所ってことになりますね。
先生:はい…。ああ、でもノートパソコンをいじったり、ちょっとした書き物をするようなスペースとしてはいいと思いますよ(笑)
五十嵐:ああ、よかった。こういうケースはどちらかというとその用途で設けることが多いです。でも「ガッツリここで勉強させたい」というご要望の場合は気を付けなければいけないですね。ちなみに今、お見せした画像はクオリア02モデルハウスの画像でした。こちらはどうでしょうか?先日まで公開していたクオリア01モデルハウスの画像です。
<2Fの階段ホールにある、吹き抜けまわりのスペース。大きなデスクを設置した>
五十嵐:これは2Fの階段まわりにデスクを設けた例です。親が1Fからでも子供の雰囲気はなんとなく感じつつ、声もかけられるってことで設置する例が多いですね。
先生:こういうスペースは中学生以降ならいいのではないでしょうか。小学校低学年ですとまだ集中力がないですし、親の目が直接は届かないこともあって別のことして遊んじゃうかもしれませんね。
五十嵐:あとは現在、公開中のクオリア05モデルハウスのスタディスペースはこんな感じなのですが….
<リビング併設のフリースペースに設置したデスク。壁の作り方によっては個室みたいにもできます>
先生:ああ、これは良さそうですね。さきほどの集中できる条件はある程度満たしていそうですし。場所はリビングの一角でしょうか?
五十嵐:そうです。リビング併設のフリースペースに備え付けのデスクをつけています。「子供はリビングで勉強するのが良い」ってよく聞きますけど、そうなんですか?
先生:はい、リビングでの勉強が子供の学力向上のためにはベストだと思います(キリッ)
なぜリビングで勉強するのがいいの?
五十嵐:子供部屋もあるのに、なんでリビングで勉強するのがいいんですか?私自身は勉強といえば子供部屋だったのですが…。まあ、そんなに勉強したわけではありませんが。
先生:リビングで勉強するのが良いポイントは3つあると思います。
①:わからないことをすぐに聞ける
→リビングには家族が集っていることが多いですから、なにかわからないことがあったらすぐに聞くことができますよね。だからわからないことをそのままにしないという習慣が身に付くと思います。これって学力の向上には大切な要素ですから。
②:集中力がつく
→リビングってテレビや家族の話し声など聞こえてやかましいことが多いですよね。でもそういった集中をそがれる要因があるなかで勉強できるようになると、ほかのどんな環境でも集中できるようになると言われているんです。集中力は勉強にかぎらず仕事でも大切ですよね。
③:親の背中を見て育つ 的なこと
→家族がそばにいるリビングで勉強するとそれだけで思い出になりますよね。子供部屋で勉強していた記憶って別に良い思い出にはならないと思いますし。母親が家事をする隣で勉強すれば、「親もがんばっているし僕もがんばるか」みたいになることも多いと思います。
先生:学力の向上っていう意味だけでなく、楽しい時間を過ごすという意味でも子供が勉強する場所をリビングにするのは良いことだと思いますね。
五十嵐:子供部屋で勉強するのはよくないんでしょうか?
先生:悪いとは思いません。ただ、年齢によりますよね。繰り返しになりますが小さい子はまだ集中力がないですし、『学ぶことは楽しいことなんだ・日常のことなんだ』っていう習慣をつける意味でリビング学習がいいのではないかと思います。さすがに中学生の受験時期や、高校生になってくると自分の部屋のほうが集中できる子も多いと思います。なので、ある程度の時期に「どこで勉強するのが集中できそう?」っていうのを聞いてあげるといいのではないでしょうか?
どうすればリビングでの学習がはかどる?
勉強スペースのちかくに収納を設ける
先生:勉強スペースの近くに、サッと勉強道具を収納できるとすぐに片づけられますからね。私も学生時代はダイニングテーブルで勉強してましたが、近くに収納があって便利でしたね。
五十嵐:「ダイニングテーブルで勉強させたいけど、食事の度に片づけるのが面倒」というのはよく聞く悩みですね。テーブル横のこんな収納はどうでしょう?
先生:いいと思いますよ。片づけるところまでをルールにして習慣づければ、なおいいと思います。
先生:ただ、扉ですべて隠せてしまうようなつくりですと、とりあえずそこに隠しておけば綺麗に見えちゃうので、整理の習慣はつかないかもしれませんね。
リビングに話題を発展させるようなグッズを置く
先生:私の家では、リビングに地球儀とか地図帳を置いていました。例えば家族でテレビを見ているときに「パプアニューギニア」が出てきたとします。言葉の響きも面白いですし、「それってどこにあるんだろう?」と思ったときに、地球儀で調べて「遠いね~」とか言ってましたね。
五十嵐:なるほど。地球儀ってインテリア的にもアリなことが多いですしね。
先生:あとは、兄妹と地図帳で「どっちが先にパプアニューギニア探せるか競争」とかしてました。ゲーム性があると子供って興味を持ちやすいですからね。国語辞典や英和辞書も鉄板でしょうか。あとはこんなカードゲームもありますよ。
五十嵐:「アンゲーム」カードをめくると….「あなたのお酒の失敗は?」なんですかこれ?
先生:カードを引いた人から指名された人はこの話題について話さなくてはいけないというルールのゲームです。五十嵐さん、お酒の失敗は?
五十嵐:お客さんと飲みにいって、記憶を無くしてしまったことです。しかもお客さんの奥さんに家まで送ってもらっていた….。申し訳ございませんでした…。
先生:「素直に謝ることについてどう思う?」みたいな、普通に生活しているとなかなか話題にならないものがあるので、家族間のコミュニケーションがゲーム的にとれるかと思います。
子供が手伝いやすい動線にする
先生:ちょっと勉強とずれますけど、子供が家事を手伝いやすい間取りは教育上良いのではないかと思います。
五十嵐:たとえば?
先生:小さい子って何か役割がほしいじゃないですか。「〜ちゃんは箸を配る係」「〜ちゃんは醤油を持ってくる係」とか。家事動線がいいとそれをやる気にもなりますよね。まあこれは大人もそうですが。
五十嵐:たしかに。洗濯物の収納なんかもそうですよね。洗濯したものを自分の部屋に持っていく習慣がつくかって間取りによるところが大きいでしょうね。その理由から、最近1Fがリビングで2Fに洗濯室やお風呂を持ってくる間取りが増えてきてます。
先生:はあ~、なるほど。たしかにこれだと洗濯物出しや取り込みも楽ですね。「お風呂に入るときに洗濯物を出して、乾いている洗濯物は自分の部屋に持っていくこと」っていう家族のルールをつくると子供は従いやすいと思います。
ルールづくりは大切
先生:先ほどの洗濯物の例もそうですが、『家族のルール』をつくって、大人も子供もしっかり守ることは大切です。それがないと小さい子は何が良いことなのかわからないですからね。
五十嵐:先日、北王スタッフが新築した家にお邪魔したのですが、リビングの一角にある収納がおもちゃ入れになっていて、「ここがおもちゃ箱だよ」ってルールにしていることがうまく機能している様子でした。
先生:ああ、これはいいですね。リビングも美しく保てるような配慮をしているあたり、さすがですね。あと例えばスマホを子供の自室に持ち込ませたくない親もいるかと思いますが、充電するのは場所を一か所に決めて、大人も子供も部屋には持ち込まないっていうルールを徹底するといいかもしれませんね。
子供の自宅学習について参考にしてください!
今回は子供の学習・教育と家とのかかわりを、「スタディスペース」を切り口に考えてみました。藤本先生のお話を聞いて、スタディスペースにかかわるお客様の要望について、いつもと違った視点でとらえることができました。子供の自宅学習について、「どんな間取りがいいのかしら」「何か良い工夫ってあるのかな」という方へ、是非参考にしていただければと思います!
<協力:藤本先生 取材:五十嵐、前野>
スタディスペースのアイデアをオープンハウスで。
北王では定期的にオープンハウスやモデルハウスを公開しておりますので、下記のリンクよりイベント情報がチェックできます。予約フォームに必要事項を記入いただき送信するか、お電話011-633-3917までご予約ください。また、平日にご見学希望の方もお電話にてお問合せください。
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